謎の特効薬(2)
道中は、かなり暑い思いもしまいたが、とりあえず無事目的地に到着。薬の効果はばっちりでした。副作用もほとんどなく、本人もびっくりするくらい効き目がありました。
帰りにも、きちんと服用して、全く車酔いすることなく、解散となりました。解散場所で、彼女が尋ねてきました、
薬の名前を教えて欲しい。この薬があれば、車に乗ることに何の不安もない。今まで、こんなに効き目があった薬は初めてだと。
そこで、私はポケットから、黄色い錠剤の詰まった、小さな薬瓶を取り出すと、彼女に手渡しました。
「何これ?ビタミン剤じゃない。冗談はやめて。意地悪しないで教えてよ~。」
「君が飲んだのは、正真正銘ビタミン剤さ。酔い止めでもなんでもない。」
最初は、全く信用しませんでしたが、私の話を聞くうちに、彼女も納得していきました。これは、医学用語でいうプラシーボ(プラセボ)効果と呼ばれるものです。専門的にも意見は分かれるところですが、思い込みによる病には効果は十分あると、私は思います。
小さな子供は、よく車に酔います。これは、まだ内耳が成長過程にあるため、三半規管の働きが甘く、長時間車に乗ると、酔ってしまうのです。それと、体が小さいために、外の景色がよく見えないので、車内ばかりを見てしまうことも原因の一つです。しかし、年齢と共に、自然に車酔いも克服されていくのですが、普段からあまり車に乗る機会が少ない子供が、そのまま成長してしまうと、「車に乗ると酔う」という暗示にとらわれてしまいます。いくら、自分で大丈夫だと思いこんでも、意識の片隅にある不安が、当時の記憶を呼び覚まし、実際は車酔いしていないのに、気分が悪くなることがあります。
人間の体は、意識に大きく左右されます。たとえば、梅干しを思い出しただけで、口の中に唾がたまってきて、なんだか酸っぱい感じがしたりするものです。彼女の場合も、同様に、車に乗ると、吐いた時の記憶が呼び起こされて、その記憶だけで気分が悪くなることが、繰り返されていたものと思われます。
すでにかかってしまっている暗示を解くには、新たな暗示をかける必要があります。しかし、そこで注意しなければならないのは、一方的に都合のよい内容では、100%の信用は得られません。数%でも、疑心があるとなかなか暗示はかかりません。元の暗示から気をそらす必要があります。そこで、この薬には副作用があると言ったのです。言われた本人は、車に酔うことよりも、トイレに行きたくなることや、寒気がすることに気を奪われて、本来の車酔いの事にまで気がまわりません。しかも、トイレ休憩と称して、たびたび車を止めて、休息を取ったり、冷房を止めて外気をそのまま車内に入れることで、気分を落ち着かせたりしていましたので、さらに効果は上がったというわけです。
優秀なスポーツ選手などは、試合前にイメージトレーニングを必ずやります。これも、一種の自己暗示効果を狙ったものです。
明日は、この暗示について、もう少し心理学的にお話していきたいと思います。(*^^)v





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